離婚前提から 始まる恋
「これからは必ず俺に報告してくれ」
「はい」

以前から、兄貴に何度か「秘書との関係が近すぎないか?」「もう少し距離をとれ、花音ちゃんがかわいそうだろう」と苦言を言われている。
そいう言われるたびに、兄貴だっていつも花音を側に置いているじゃないかと思っていた。
でもなあ・・・
今の俺にとって里佳子は完全に片腕で、いなくてはならない存在だ。

「そう言えば、調査の結果がそろそろ出るはずですね?」
プライベートモードだった表情を引っ込めた里佳子の心配そうな顔。

「ああ、明日には出るはずだ」

三朝建設は三朝財閥傘下の大企業。
一年に建設するビルだけでも数百になる。
何百人もの設計士と、いくつもの工事業者と、不動産業者が連携して大きな箱物は出来上がる。
当然そこには利害関係が生まれるし、利益を生み出そうと欲をかく人間だって出てくる。
今回、俺がかかわった物件もそうだった。
設計の段階でも、施工の段階でも、何十人もの目を通して完成した郊外のファミリー向けマンション。
そこに耐震偽装の疑惑が持ち上がった。
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