離婚前提から 始まる恋
「もし、事実だったとなれば、どうなるんでしょうか?」
珍しく里佳子が不安そうだ。

「そうなったら、まずは住民に謝罪して、耐震工事を追加するしかないだろうな」
「うちは設計事務所の図面と、施工の子会社や孫会社を信じていただけなのに・・・」

そうだな、悪いのは法令ギリギリの耐震設計しかしなかった設計士と、己の利益のため手を抜いた施工会社。
でも、それは言い訳にしかならない。

「これも俺たちの仕事だ」
「そんな・・・」

大きな会社と多くの人を率いていくからには、それだけの責任だって背負うことになる。
その自覚は俺だってある。

「おかしいですよ。何でうちが・・・」
悔しそうに、里佳子が唇をかんだ。

「お前の気持ちもわからないではないが、こうなるまで気が付かなかった責任は俺達にある」
「そんな・・・」
「それに、香港の事業が動き出せばその何倍もの利益が出るんだ。それを待とう」
「そうですね」

改ざんとは言っても法律すれすれで、補強工事をすれば強度に問題はない。
後は誠心誠意、住民に誠実な対応をするしかない。
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