離婚前提から 始まる恋
「とにかく、今回の件はうちの責任だ」
勇人に向けられた、経営者としてのお父様の言葉。

「しかし、設計の段階と施工業者の確認ミスによるもので、三朝建設が意図的に不正をしたものではありません。その証拠でしたらここに」
そう言って里佳子さんがテーブルに広げられた資料を指さすのを、
「田口君、やめないか」
普段は『里佳子』と呼ぶ勇人が、険しい顔で制した。

「ですが・・・」

里佳子さんは勇人にとって、ただの秘書ではなく相棒のような存在。
だからこそこんな場でも意見が言えるのだろう。
すごいなと思う反面、その強さに多少の嫌悪感を覚えてしまう。

「田口君、三朝建設が意図的に行ったことでないならどうだって言うんだね?それで住民が納得できると思うのか?」
「それは・・・」
「今大切なのは、実際住んでいる住民のために誠心誠意最善を尽くすことだろ?違うか?」
「いえ、その通りです」
悔しそうに、それでも里佳子さんは口をつぐんだ。

きっと不満はあるだろうけれど、お義父様の言葉が正論だと里佳子さんにもわかったらしい。
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