離婚前提から 始まる恋
「お待たせしました。きっと奥様の入れるコーヒーほど美味しくはないと思いますが」
「一言余計だ」

朝から寝不足な上気分も最悪なのに、これ以上余計なことは聞きたくないとつい強い言葉になった。

「どうしたんですか?」

ここまで機嫌が悪いと、さすがに何かあったんだろうと里佳子も気が付いたらしい。

「どうもしない、大丈夫だ」

副社長室のデスクに置かれたコーヒーを手に取り、まずは一口。

うーん、普通だな。
可もなく不可もなく想像通りの味。
それでも朝のカフェインが補給できたのだからよしとしないといけないのだろう。

「よかったら下のコーヒーショップから配達してもらうこともできますが?」

顔に出したつもりは無いが、落胆が態度に出てしまったらしい。

「いや、これでいい。それより、午前中の会議の資料に目を通すから持ってきてくれ」
「はい」

訝しそうな表情で、里佳子は部屋を出て行った。
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