離婚前提から 始まる恋
今日の会議の議題は、一ヶ月ほど前に発覚した耐震偽装疑惑。
初めはそんな馬鹿なことがあるはずないと思っていたが、調べが進むうちに事実とわかり、施工の責任者としてうちが責任を負うことになってしまった。
もちろん、手広く仕事をしていればこんなトラブルだってないことではない。
自分たちのまったく知らないところで起きていたことだけに、憤りもなくはないが、うちの名前で出たのものなら誠実に対応するしかない。
里佳子は不満そうだったが、俺は自分で泥をかぶるつもりでいた。
ただ、できれば花音の耳には入れたくなかった。
昨日MISASAの社長である親父に調査の結果を報告に行った時、花音が同席していた。
そこに花音がいてくれたおかげで親父の機嫌はいくらか穏やかで助かったけれど、自分の口で花音に伝えられなかったことが気になって、昨日は早めに退社した。
それが・・・

「資料こちらに置きます。会議の10分前にお声をかけますので」
「ああ、頼む」

いつも難しい顔をして愛想がない分、感情が読み取りにくいとよく言われる。
ビジネスをする上では相手に表情を読まれないことが利点でもあるから、助かることも多い。
それでも、今日みたいな日には感情が顔に出てしまうようだ。
さすがの里佳子も、ここまで機嫌の悪い俺には近づいてもこない。
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