離婚前提から 始まる恋
「おかえり」
帰って来た花音を見て、自分でも驚くくらい冷静な声が出た。

「勇人、今日は遅いって・・・」

目を泳がせながら、挙動不審な花音にイラッとする。
疑いたくはないが、あの時の『拓馬君』と一緒にいたんじゃないかと不安になった。

「誰とどこにいた?」
「えっと、杏と食事に」
「あいつも一緒か?」
「違うわよ、杏と二人」

同期入社の森村杏さんは、花音にとって一番親しい友人。
きっと、花音の言葉は嘘じゃないのだろう。
それでも、俺は苛立ちは治まらなかった。

「しばらくおとなしくしているんじゃなかったのか?」
「え、お酒は飲んでないよ。ご飯を食べただけ」
「それは言い訳だ。今何時だと思っているんだ?こんな時間まで連絡もせずに帰ってこなかったら心配するだろうが」
「・・・ごめんなさい」

花音に向かってこんなに怒ったのは初めてのこと。
自分でも驚くくらい、感情が抑えられなかった。
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