離婚前提から 始まる恋
「え、ちょっと、それはまずいでしょ」
小心者の私は手を出す勇気もなくて、しばらく見つめた。

「大丈夫よ、一杯くらい」
「いや、でも・・・」
もし見つかったら大騒ぎになる。

「みんな飲んだから、花音も飲んで」
「ええー」

こういう時の女子は恐ろしい。
もし一人だけ反発すれば、虐められることだってある。でも・・・

「ほら、花音」

友人の1人がグラスを差し出して、私も仕方ないなと受け取った。次の瞬間、

「こら、未成年だろ」
横から伸びてきた手がグラスを奪って行った。

え、ええ。

「真也に見つかったら大目玉だぞ」
ギロリと私を睨む男性の顔には見覚えがある。

「勇人さん?」
「あれ、名前知っていたんだ」
意外そうな顔。

彼のことは兄の友人として以前から知っていたし、名前も覚えていた。
兄の周辺にいる人たちの中では硬派な印象で、あまり笑うことも話しかけてくることもない人。まさかこんな出会いがあるとは思ってもいなかったけれど。

それからしばらくお説教されて、私と友人たちはホテルへと帰された。
この日以来、私はずっと彼のことが気になっていた。
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