離婚前提から 始まる恋
「花音・・・すまなかった」
無意識のうちに花音の気持ちを傷つけていたことを知り、俺は素直に謝った。

できることなら抱きしめたくて手を伸ばすと、その手を払われた。
反動で花音の肩からバックが落ち、中身が床に飛び散ったのを俺と花音が屈みこんで拾う。
その時、
「「あっ」」
小さな声が重なった。

花音のバックからこぼれ落ちた小さな紙きれ。
そこには、あいつの名前と連絡先が書いてあった。
チラッと、一瞬見ただけだがあいつの、『拓馬君』の名前。それは間違いない。

「あの、違うの、これは・・・」
咄嗟に言い訳しようとする花音に、
「もういい。花音には花音のやりたいことだってあるんだ、邪魔するつもりはない」

冷たく言い放って、俺は背中を向けた。
このままここにいればもっと花音を傷つける気がした。
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