離婚前提から 始まる恋
「そう言えば、週末は実家に帰るんだったね」
「はい。両親がどうしてもって言うものですから」
「ゆっくりしておいで。ご両親も、きっと会いたいだろうから」
「ありがとうございます」

先日勇人がまとめた香港の港湾地区再開発事業が本格的に動き出したところだし、マンションの耐震偽装騒動もまだ解決していない今、多くの案件を抱える勇人に時間がないのはわかっている。
そんな時に無理をさせるようで申し訳ないけれど、父がどうしてもと言うならば行くしかないだろう。

「よかったら、しばらく向こうで静養して来ても構わないよ」
「え？」
驚いて振り返ってしまった。

「いや、なんだか最近花音ちゃんの顔色がよくない気がしてね。ちょうど週明けからのアメリカ出張で僕もいないし、少しくらい休んでも問題ないから」
「ですが・・・」
「無理に休めって言うんじゃない。花音ちゃんさえよければってことだから」
「はい、ありがとうございます」

言い方に違いがあるのにしても、勇人と尊人さんに同じことを言われて驚いた。
やっぱり兄弟なのよね。
そして、そんな言葉をかけさせてしまうほどに私の顔は疲れて見えるんだと痛感した。
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