離婚前提から 始まる恋
その後は会うこともなく5年が過ぎた。

その間に、私は東京の大学を卒業して三朝財閥の本社であるMISASAに入社し、三朝財閥本家の長男である三朝尊人専務の秘書になった。
当時はまだ勇人が三朝財閥の御曹司だなんて知らなくて、ただ父の勧めるままに就職したつもりだった。
それが・・・

「はあ?お見合い?」

大学を卒業してから半年しかたっていないのに、いきなり見合いの話が出てびっくりした。
もしかしたらいつかはお見合いをして、父の勧めるままに結婚するのかなと思ってはいたけれど、まさかこんなに早くとは想像もしなかった。

そもそも政治家にとって大きな後ろだてを持つことは、それだけで選挙の武器になる。
特に当時健康問題が取り出されていた父にとって次の選挙はかなり苦戦になると思われていたから、三朝財閥の名前は魅力的なものだったに違いない。
そのくらいのことは私にも理解できる。
でも・・・

「あちらも大変乗り気だから、会うだけ会ってみなさい」
父にそう言われると結局断れなくて、
「じゃあ、会うだけなら」
と了承してしまった。

後になり、相手が勇人であることと、勇人が尊人専務の弟だと知って驚いたけれど、きっと勇人の方で断ってくれるものと思っていた。
まさか私との縁談を受けるなんて思ってもいなかった。

その後聞いた話では、彼自身も実家からしつこくお見合いを迫られて断れなかったらしい。
同じように私も、父の勧めを断ることができなかった。
もちろんそこには勇人に惹かれている私の思いがあった。
勇人だったから、私は承諾した。

お見合いをして、二度ほど食事をしたら両家の顔合わせの日取りが決まっていた。
それからはあれよあれよという間に入籍の日取りが決まり、見合いから半年もたたずに私たちは結婚した。
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