離婚前提から 始まる恋
「花音、母さんは?」
さっきまで来客の対応をしていた兄が、母を探している。

「その辺にいない?」
どこか家の中にいると思うけれど。

「いないから聞いているんだろ」
「そんな、私だって知らないわよ。何の用なの?」
私だって忙しいのよと、語気が強くなった。

「俺の携帯見なかったか?」
「はあ?それが用なの?」
「ああ」
「ああって、忙しいお母さんに携帯のありかを聞こうっていうの?」
「そうだけど?」

はあぁー。
私は思い切りため息をついた。

「母さんは今ものすごく忙しいの。自分のことは自分でしてちょうだい」
「そんなこと言ったって・・・」

ブツブツの言いながら、それでも兄は部屋を出ていった。
ったく、何考えているのよ。
外では出来た息子で通っている兄も、家に帰ればこの始末。
こうなったら、兄さんにも早くお嫁さんをもらうことね。
そうすれば母さんも楽になるし、私が呼ばれることもなくなるはずだわ。
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