離婚前提から 始まる恋
「ああ花音、真也見なかった」
今度は母さんが戻って来た。

「え、さっき、母さんを探していたわよ」
「あら、入れ違いになったのね。悪いけれど花音、これを真也に持って行ってくれる?」

そう言って差し出したのは兄の携帯。
どうやら母が持っていたらしい。

「地元テレビのインタビューがあるからって、私が預かっていたのよ。きっと探していると思うから、お願いできる?」
「いいけれど・・・」
「悪いわね。私はこの後お料理の確認があるのよ」
「わかったわ」
「お父さんや勇人さんと一緒にお客様のお相手をしているはずだから、行ってみて」
「確か、後援会の方がお見えだったわね」
「ええ」

パーティーは明日だけれど、来客は前日から続く。
普段地元にいることが少ない父が帰ってきていると知れると、訪れる人が後を絶たない。
きっと今日は夜遅くまで来客が途切れることがないだろう。

「せっかくだから、あなたもご挨拶してきなさいね」
「はーい」
仕方ない、行ってきますか。
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