離婚前提から 始まる恋
「おじさま、ご無沙汰しております。花音です」
母さんに言われた通り客間に行くと、お客様と父さんと勇人に兄さんまでがそろっていた。
「おお花音ちゃん、ちょっと見ない間に大人になったなあ」
「嫌だ、おじさまったら」
お客様は父の後援会のメンバーで、地元の名士。
私も小さいころから何度となく会ったことのある見知った顔だ。
「それに、こんな立派な婿さんまで、本当に親孝行だなあ」
「そんな、」
「まだ未熟者ですので、今後ともご指導をお願いいたします」
そんなことありませんと謙遜しようとした私に勇人の言葉が重なった。
いつもはもう少し無表情で愛想のない勇人だけれど、さすがに今は口元も緩み穏やかな顔。
受け答えも控えめで、低姿勢に対応している。
すごいな、こういう処世術がきちんと使えるところがさすがだと思う。
「三朝家の後ろ盾を得たとなれば、先生も安心ですね」
おじ様はここぞとばかり父を持ち上げる。
「ああ、いい婿をもらったと思っているよ」
多少お酒が入っているせいか、父の方も満足そうにうなずいた。
幸せそうな父。
でも、あと少しすれば勇人はいなくなる。
そうなったらどれだけ落胆するんだろう。
もちろん私への怒りだって相当なもののはずで、勘当されるくらいの覚悟はある。
ブブブ ブブブ
ん?
聞こえてきたスマホのバイブ音。
私のスマホは右のポケットに入れたままだし、兄のスマホは私の手にある。
どちらも震えた様子がないから・・・
「ねえ、勇人?」
隣に座る勇人からバイブ音が聞こえた気がして、声をかけてしまった。
「うん、大丈夫だよ」
どうやら勇人は着信に気づいているらしい。
母さんに言われた通り客間に行くと、お客様と父さんと勇人に兄さんまでがそろっていた。
「おお花音ちゃん、ちょっと見ない間に大人になったなあ」
「嫌だ、おじさまったら」
お客様は父の後援会のメンバーで、地元の名士。
私も小さいころから何度となく会ったことのある見知った顔だ。
「それに、こんな立派な婿さんまで、本当に親孝行だなあ」
「そんな、」
「まだ未熟者ですので、今後ともご指導をお願いいたします」
そんなことありませんと謙遜しようとした私に勇人の言葉が重なった。
いつもはもう少し無表情で愛想のない勇人だけれど、さすがに今は口元も緩み穏やかな顔。
受け答えも控えめで、低姿勢に対応している。
すごいな、こういう処世術がきちんと使えるところがさすがだと思う。
「三朝家の後ろ盾を得たとなれば、先生も安心ですね」
おじ様はここぞとばかり父を持ち上げる。
「ああ、いい婿をもらったと思っているよ」
多少お酒が入っているせいか、父の方も満足そうにうなずいた。
幸せそうな父。
でも、あと少しすれば勇人はいなくなる。
そうなったらどれだけ落胆するんだろう。
もちろん私への怒りだって相当なもののはずで、勘当されるくらいの覚悟はある。
ブブブ ブブブ
ん?
聞こえてきたスマホのバイブ音。
私のスマホは右のポケットに入れたままだし、兄のスマホは私の手にある。
どちらも震えた様子がないから・・・
「ねえ、勇人?」
隣に座る勇人からバイブ音が聞こえた気がして、声をかけてしまった。
「うん、大丈夫だよ」
どうやら勇人は着信に気づいているらしい。