離婚前提から 始まる恋
両家の体面もあり披露宴は盛大に行ったけれど、仕事が忙しい勇人を言い訳に新婚旅行は後日とし、新居もすすめられるままに決めた。
もちろん多少のリフォームはしてもらったものの、2人で買い物に行ったり相談して決めたりすることもなかった新婚生活のスタートはあまりにも事務的で、私たちらしくて逆に笑えた。

「ねえ、勇人はなんで私と結婚したの?」
結婚式の後、さすがに気になった私は聞いてみた。
「うーん」
そう言ったきり、考え込んでしまった勇人。

財閥の家に生まれれば、好きとか嫌いだけで結婚なんてできないのかもしれない。
色んな利害関係が絡んだ政略結婚が当たり前なのかもしれない。
私自身も同じような環境だから、事情は理解できる。
でも、だからこそ、勇人の思いを確認しておきたかった。
もちろん「それは花音が好きだからだよ」なんて返事が返ってくるとは思っていない。
もしそうならうれしいとは思うけれど、そうじゃないのを私も知っているから。

一度唸った後困った顔で口を結んだままの勇人を見ていて、私はだんだん不安になった。
そして、ある女性の顔を思い出した。
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