離婚前提から 始まる恋
「私たち、離婚するの」
「え?」

誰もいないキッチンに訪れた沈黙。
私も母も一瞬時が止まったように動けなくなった。

結婚も離婚も私と勇人の問題で、2人で決めること。
最終的には2人できちんと報告をするつもりだった。
もしかしたら叱られるのかなとは思っていたけれど、目の前にある母さんの辛そうな顔が胸を締め付ける。

「原因は何なの?」
「原因・・・」

うーん、何だろう。
性格の不一致?
いや違うな、勇人といると楽しかったし、幸せだったもの。
里佳子さんの存在?
それは・・・大きな要因の一つだけれど、勇人はちゃんと私のことを尊重して大切にもしてくれた。

「花音は勇人君のことが好きなんだと思っていたのに」
「うん」
好きだよ。
大好き。
だからこそ、別れるの。

「これからも、勇人君のことを支えていってくれると思っていたのに、がっかりだわ」
「お母さん・・・」

小さいころから口やかましく注意はされても、いつも私の味方だった母さんに、初めて突き放されたような気がした。
出来れば私だって、母さんをがっかりさせたくはなかった。
でも・・・

「離婚は、2人で決めたことだから」

ガタンッ。
その時、キッチンの入口から物音がして、呆然とたたずむ兄がいた。
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