離婚前提から 始まる恋
それからしばらくして、私は兄と寝室用に用意された客間にいた。

ちょうど母が父に呼ばれてキッチンを出て行ったタイミングだったし、パーティーのために来ているお手伝いさん達の目も気になって移動した。

「どういうことだ?」
いつになく、兄の顔が険しい。

「それは・・・」

本当はまだ母にも話すつもりは無かったし、勇人と2人できちんと報告をするつもりでいた。
特に兄は勇人の友人でもあるから、勇人本人から知らせるべきだとも思っていた。
マズイな、最悪の展開だわ。

「勇人が浮気でもしたか?」
「違うわ」

浮気なんかじゃない。
だって、私と勇人がお見合いをしたときにはすでに里佳子さんが勇人の隣にいたんだから。

「もしかして、お前に誰か好きな男ができたか?」
「そんなわけない」

私は勇人が好きだし、尊敬もしている。
勇人以上の人が現れるとは思わない。

「あいつは、人を傷つけるような人間じゃないだろ?」
「うん、そうね」

勇人は優しいし、誠実だし、だからこそ私は勇人を好きになった。
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