離婚前提から 始まる恋
月曜日の朝、私は東京に戻った。
さすがに電車で帰ってくるだけの元気はなくて実家の車を出してもらったけれど、戻ること自体は誰からも反対されることがなかった。
私達が離婚を考えていることを父はまだ知らないけれど、母と兄は知っている。
もしかしたらくどくどと説教されるのかなと心配もしたけれど、『後悔しないようによく考えなさい』と言われただけだった。

ガチャ。
「ただいま」
月曜日の昼間に勇人が家にいるはずもなく、私は誰もいない部屋に向かって声をかけた。

忙しい勇人に余計な負担はかけたくなくて、戻ってくることは知らせていない。
後で知れば怒られるかもしれないけれど、それでも勇人の仕事の邪魔にはなりたくなくて、母さんにも兄さんにも口止めをした。
もちろんいつまでも隠すことはできないだろうから、夕方にでも連絡をしてみるつもりでいる。

ピコン。
母さんからのメッセージ。
『ゆっくりと体を休めて、少しでもいいから食べなさい。そして、本当に辛くなったら帰ってきなさい』

母として、私を気遣ってくれることに胸が熱くなる

『とりあえず会社にはお休みをもらったから、家でゆっくりします。母さん、ありがとう。』

ちょうど尊人さんのアメリカ出張と重なって私の仕事にも余裕があったし、尊人さんが秘書課長に口添えしてくれたおかげで、私は三日間の有休をとることができた。
さあ、頑張って早く体調を戻さないといけない。
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