離婚前提から 始まる恋
「机に置いてありましたのですぐにわたりましたが・・・」
書類を差し出しながら、里佳子が何か言いたそうだ。

「どうした?何かあったか?」
朝部屋を出る時には変わったことはなかったはずだが。

「奥様がいらっしゃいました」
「え?」
思わずポカンと口を開けてしまった。

「花音がいたのか?本当に?」
「ええ」

里佳子が言うのだから嘘ではないのだろう。
でもどうして?
花音は実家に預けたままで、まだこっちに戻るとは聞いていない。

「リビングのソファーで休んでいらっしゃいましたが、随分具合が悪そうでした」
「そうか・・・」

だから、実家でゆっくり静養する様に言ったのに。
兄貴にだってしばらく休みをもらうからって連絡してあって、そのことも花音に伝えたはずだ。
「ったく、何で言うことが聞けないんだかな」
俺が心配することくらいわかりそうなものなのに。

「女はみんなわがままで自分勝手だとでも言いたそうですね」
俺の吐き捨てた言葉を、里佳子が拾った。

「違うのか?」
「私も一応女ですが」
「そうだったな、すまない」

間違っても、里佳子に喧嘩を売る気はないし、花音が悪いとも思わない。
それでも、もう少し状況を判断してほしい。
体調が悪い中無理をして東京に戻っても、何もいいことはないはずじゃないかと俺は言いたいんだ。
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