離婚前提から 始まる恋
「悪いな、忙しい時に突然」
「いや、俺の方こそ急に帰ってしまって申し訳なかった」
「そのことは大丈夫だ。気にするな」

花音の兄さんとはいえ、学生時代から友人の真也とは二人きりになればいつもこんな調子で話をする。
お互いに遠慮をするような関係でもない。

「花音の奴、今日こっちに帰ったんだが、連絡があったか？」
「いや、直接は聞いていない」
「やっぱりそうか」
呆れた顔をした真也だが、そこまでは想定内のことだったらしい。

「たまたま書類を家に忘れて里佳子に取りに行かせたんだが、その時に花音と会ったって言っていたから、マンションにいるのは間違いない」
「そうか。無事には帰ったんだな」
「そのようだ。で、どうしたんだ急に？」

昔から花音に対して少し過保護な真也だが、わざわざそれを言うためにここまで来たとは思えない。
きっと何か話があるんだろうと思うんだが・・・

「今日は、お前に聞きたいことがあってな」
いつになく、真剣な表情で真也が俺を見ている。

「何だよ、改まって」
なんだか怖いな。
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