離婚前提から 始まる恋
その日の夕方。
俺はいつもより早く帰宅した。
里佳子から花音がマンションに戻っていると聞いていたから、この先のことについて話をするつもりだった。
しかし・・・
自宅マンションに花音の姿はなく、テーブルの上に置かれた一枚の紙。

『これからのことを一人になって考えてみたいと思います。今夜は杏の所にお世話になるので、心配しないでください』
いつも通り綺麗な文字で綴られている。

部屋を散らかしたまま出てしまったから怒っているのかなとは思ったが、まさかいないとは想像していなかった。
わざわざ戻って来たのにまた家を出るってことは、俺に怒っているってことだよな。

『一人になって考えてみたい』『心配しないでください』と言った花音の気持ちを汲んで今夜一晩そっとしておくって方法もある。
きっとその方が、花音は喜ぶのかもしれない。
でも、俺の方が限界だった。
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