離婚前提から 始まる恋

上司は彼のお兄様

倦怠感は感じながらも、電車に乗って会社へ出社。
マンションも会社も都心にあるため徒歩でも十分通勤できる距離だけれど、今日は歩くのが辛くて電車にした。
一週間もお休みを頂いたせいで溜まった仕事もあるだろうといつもより早めに家を出たから、電車も空いていて楽に通勤することもできた。

さて、どこから片付けようかな。
雑然と物の増えた専務室と、そこに続く専務秘書室のデスクに積まれた種類の山を見ながら、作業の段取りを立てる。

MISASAは日本を代表する総合商社で、三朝財閥の本社。
その規模も大きくて、30階建てのこのビルだけでも数千人の人が働いているし、全国の支社や支店で働く人数を合わせれば恐ろしい数字になる。
そして、私の上司である三朝尊人さんはこの会社の専務取締役。
三朝本家の直系だからってだけではなくて、その能力で次々と実績を上げている優秀なビジネスマンだ。
年齢は勇人より二つ年上の30歳で、身長は勇人とほぼ同じ185センチ。中肉中背のいい体をしていて、二人とも一流と言われる国立大を卒業した秀才。
そこまでは兄弟そっくりなんだけれど、ワイルドで精悍な顔の勇人に比べると、目鼻立ちの整った上品で端正な顔の尊人さん。性格も、どちらかと言うと無口で多くを語らず近づきがたい雰囲気を醸し出す勇人に対して、優しく人当たりのいい尊人さんは『MISASAのプリンス』なんて呼ばれている。
その点では、2人はあまり似ていない。
< 18 / 233 >

この作品をシェア

pagetop