離婚前提から 始まる恋
「花音、悪いけれどお客様の相手をお願いね」
「はい、お母さん。承知しています」

二年ぶりの国政選挙でも、当選祝賀会でどう動いたらいいのかくらい私にもわかっている。
何しろ政治家の家に生まれ育った娘なんだから。

私、三朝花音は24歳。
身長は160センチと小柄で色白。
小ぶりで主張の弱い目鼻立ちと、肩の上あたりで切りそろえらた黒髪が地味な印象で、周囲からはおとなしそうだとよく言われる。
1年前に結婚して今は東京に住んでいるけれど、今回は選挙運動のために帰郷していた。

「花音、大丈夫か?」
4歳上の兄、真也が心配そうに近づいてきた。

「私は大丈夫。兄さんこそご挨拶があるでしょ、いいから行って」
「ああ。お前も無理するなよ」

父が祖父から地盤を引き継いだように、将来は兄が父のあとを継ぐ。
そのために今は父の秘書に就いているけれど、今日みたいな日には積極的に顔を売る必要があるのだ。
< 2 / 233 >

この作品をシェア

pagetop