離婚前提から 始まる恋
一旦店の奥に消えていた勇人が再び現れたのは数分後。
右手を背中に回して何かを隠しているけれど・・・

「ゆ、勇人?」

どんなに隠しても背中には隠しきれない大きさの真っ赤なバラの花束がはみ出して見える。

「こういうの初めてだから、すごく照れるな」

恥ずかしそうに顔を赤くする勇人がかわいい。
そんなことを思いながら見ていると、テーブルのところまで戻った勇人が、私の前まで来て片膝をついた。

え、ええ。

「花音、俺と結婚してくれてありがとう。たくさん泣かせて心配もさせたけれど、これからは俺が花音と子供を守って行く。何があっても幸せにする。だから、一緒にいて欲しい」
そう言って、勇人が赤いバラの花束を差し出した。

私は驚きのあまり固まってしまった。
考えてみれば、私達はプロポーズらしいプロポーズもないまま結婚式を迎えた。
勇人といられるだけで幸せだと思っていた私は不満に感じたこともなかったけれど、プロポーズってこんなにうれしいものなのね。

「花音、返事は?」
何も言わない私に膝をついたままの勇人が聞いてきた。

「ああ、はい。よろしくお願いします」
私は立ち上がって花束を受け取った。
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