離婚前提から 始まる恋
「仕事には慣れたのか?」
あれだけ一緒にいたのに仕事以外で二人になったことがなかったせいだろうか、会話が止まったことが気になってつい里佳子に話しかけてしまった。

「ええ、おかげさまで」

離婚騒動があって、初めて花音の気持ちに気が付いた俺は、色々考えた結果里佳子を秘書課から異動させた。
俺にとっても痛手を伴う人事異動ではあったが、それがベストな選択に思えて迷いはなかった。
ただ、一方的に異動させられる格好になった里佳子のことが気になっていた。

「今まではずっと勇人のサポート役だったでしょ、今はやればやるだけ自分が評価されるから楽しい職場だわ」
真っすぐに俺を見る里佳子の眼差しに嘘は感じられない。

「そうか、それは良かった」
多少性格がきつくて周囲とぶつかることもあるだろうが、仕事のできる里佳子なら上手くやっていくはずだ。

「ところで、お前たちの関係は相変わらずのようだな?」
里佳子と真也は付き合いも長いし、年齢的に言って将来を考えてもいい頃だろう。

「やっぱり反対されているのか?」

真也に家を継がせるつもりでいる若狭のご両親は、真也の結婚相手にも求めるものがあるようだ。
しかし、真也と里佳子がきちんと話をすればわからない方々ではないとも思うけれどな。

「一体、何が問題なんだ?」

フフフ。
突然笑い声がして、
「勇人、質問ばかりね」
なんだか楽しそうな里佳子。

まるで人ごとのように笑うのが里佳子らしくもあるんだが・・・

「お前は本当にこのままでいいと思っているのか?」
余計なお世話とは思いながら、黙っていることができなかった。

このままだと数年内に真也の結婚話が持ち上がるだろう。
そうすれば今のままではいられなくなるはずだ。
『それが、里佳子お前の望みなのか?』
そう聞きたくて言葉が止まった。
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