離婚前提から 始まる恋

「結婚って、何のためにするのかしらね」
「え？」
「適齢期になったら結婚しろ。結婚したら子供はまだか？妻は夫をサポートするものだなんて馬鹿げているわ」
里佳子の口からこぼれた言葉が、俺には弱音に聞こえた。

「どうした、何かあったのか？」
どう見てもいつもの里佳子じゃない。

「花音さんと勇人の離婚騒動があって、私達のことも若狭のご両親には知られてしまったでしょ？」
「あぁそうだったな」

里佳子のことを調べれば真也との関係も出てきてしまうのは当然のこと。申し訳ないと思うが、俺にはどうすることもできなかった。

「あの後何度かお母様と会ったし、お父様とも話をしたわ」
「それで」
すんなり話がまとまったと思えないが・・・

「もちろん、最初は別れて欲しいって言われた」
「そうか・・・」

小さな頃に両親と離別した里佳子は『自分は天涯孤独なんだ』と言っている。
実際に身寄りがないのかどうかはわからないが、若狭家が望む嫁でないのは間違いないだろう。

「大丈夫よ。心配しなくても、真也がお母様を説得してくれたの。でも、関係を続けるなら結婚を。結婚をするなら、仕事を辞めて家庭に入ることが条件ですって」
「それは・・・」
里佳子にはきついな。

「まぁ、真也もゆくゆくはお父様のような大臣にと思っていらっしゃるんだから、普通の結婚とは違うわよね」
「そうだな」
「それにね、もし結婚するならお母様の親戚筋の養女になってそこの娘として嫁入りしろですって」
「は？」
そんな、今時時代錯誤な話はないだろう。

さすがに俺も絶句してしまった。