離婚前提から 始まる恋
「待たせたな」
しばらくして、真也が戻ってきた。

「大丈夫か？」
真也の表情が険しい気がして、きっと仕事で何かあったのだろうと心配になった。

「ああ。今このホテルに総理がいるらしくて、顔をだせって呼ばれたんだ」
「そりゃあ大変だな」

今の総理はお義父さんとも懇意だし、真也も面識があるのだろう。

「ホテルの外は報道陣も来ているみたいだし、誰かがSNSに上げたらしくて野次馬も集まっている。もうすぐここを出るらしいから、俺も一緒に行ってくる」
「そうか」
「総理としては、このタイミングで誰と会っていたかを公にはしたくないらしい」

今は選挙前の根回しの時期。
記者を避けながら色々な人と面会をするのに、真也はいいカムフラージュになるのかもしれないな。
これも選挙の準備ってことだろう。

「じゃあ私も帰るわ」
いつの間にか荷物をまとめていた里佳子も席を立った。
「それじゃあ俺も」
せっかくだから家に持ち帰った仕事を片付けてしまおう。
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