離婚前提から 始まる恋
う、ぅーん。
かすかな頭痛を感じながら私は目を覚ました。

一体どのくらいの時間がったのかはわからないけれど、今私がベットに寝かされていることだけはわかる。
そして、目の前に見えるのは真っ白な天井と無機質な蛍光灯。
オフィスにしては殺風景で寒々とした空間。
でも、私はここを知っている。

三朝財閥の本社であるMISASAは都心に立つ30階建の自社ビル。
広い建物の中には色んな施設が入っているけれど、ここもその一つ。
社員が体調不良を起こした時に利用できるように作られた、医務室だ。

「痛っ」
掛けられていた布団を避けようとして、右手に痛みがはしった。

そう言えば右手を下にして倒れた記憶があるから、その時にぶつけたのだろう。
ブラウス越しで見えないけれど、これだけ痛いってことは青アザになっているのかもしれないな。

どちらにしてもこれ以上ここに居続けるわけにはいかないと、私はゆっくりと起き上がった。
その時、

「お前がしっかり見ていなくてどうするんだよ」

それは普段滅多に聞くことのない尊人さんの𠮟りつける声。
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