離婚前提から 始まる恋
「お、花音ちゃんか?大きくなったなあ」
「あ、田中先生」

背後から声をかけてきたのは地元出身の県議。
父の友人で、小さいころからかわいがってもらったおじ様だ。

「ご当選おめでとう。本人は不在だったのに、圧勝だったな」
「ありがとうございます。皆さんのお陰です」

党の中でも役職にいている父は選挙の応援に駆り出されることが多く、自分の選挙運動なんてできない状況。
そのため実際の選挙運動は母や兄や私がするしかなくて、本当に忙しい日々だった。

「お嫁に行った後でも選挙のたびに呼び戻されるなんて、花音ちゃんも大変だな」
「そんな、私は何も・・・」

政治家の家に生まれたからにはこれも運命。大変だとも不満だとも思ったことはない。
しかし・・・

「あそこにいる男前が花音ちゃんの旦那さんかい?」
「え、ええ。そうです」

数メートル先で兄と共に来客対応しているのが、私の旦那さま。

「勇人さん」
ちょうどあいさつに区切りがついたのを見計らって、私は声をかけた。
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