離婚前提から 始まる恋
やるせない気持ちを抱えたまま、俺は自宅マンションまで無言で車を走らせた。

東京のど真ん中に立つ高級マンション。
元々実家の三朝家所有の建物だったこともあり、迷うこともなくここに決めた。
都心のくせに緑があるエントランスと広く重厚な造りのホール、２４時間対応のコンシェルジュは重宝しているし、当然セキュリティーも万全だから今のところ何の不満もない。

「何か欲しいものがあれば、フロントに言って持ってきてもらおうか？」
「ううん、今はいいわ」
「そうか」

リビングのソファーの花音を寝かせ、俺も上着を脱ぐ。

はあー、疲れた。
一旦腰を下ろしてしまえば、急に疲労感が込み上がる。
そう言えば俺も昨夜はほとんど眠っていないんだった。
俺がこれだけ疲れているんだから、一週間以上も選挙運動に駆り出されていた花音だって疲労がたまっていたはず。
俺が、もう少し気遣ってやるべきだった。
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