離婚前提から 始まる恋
「夕食、何か作りましょうか？」
一息ついた後、花音が動き出すそぶりを見せた。

「俺がするから、お前は寝てろ」
「でも・・・」

困った顔をする花音がかわいいなと思いながら、今は少し苛立たしい。
俺の家もそうだが、忙しい父親がいれば当然家事の負担は母さんにかかってくる。
夫婦で家事を分担するとか、協力し合って子育てをするとかってことも難しい。
実際俺の家も、家事と子育ては母さんに役目だった。
年に一度の家族旅行と月の一度の外食以外親父と過ごす時間は多くなかった。
だからと言って親父を嫌っているわけではないし、厳格だけれどいい父親だと尊敬もしている。
ただ、自分が同じようになりたいかと聞かれると、違う気がする。
俺の知る限り、花音のところもうちと同じような家庭に見える。
地位も知名度もある忙しいお義父さんと、料理上手で家庭的なお義母さん。花音はそんな家庭で育ったんだろう。
だからかな、家事は自分の仕事と思っている節があるし、どんなに忙しくても俺に家事を分担させようとはしない。
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