離婚前提から 始まる恋
「夕飯、支度したのか?」
ダイニングに戻って来た勇人が、準備された夕食を見ながら聞いてきた。

「うん、実家から鯛をもらったの。せっかくだから鯛そうめんにしようと思って」

実家から送られてきたおすそ分けの鯛が美味しそうだったから、焼いて鯛そうめんにしてみた。
普通そうめんの具に鯛なんて考えないけれど、頂き物の多い実家では毎年夏の恒例メニュー。
身は焼いてほぐし、残ったあらと骨でだしをとるととっても美味しいから、私も大好物だ。

あれ?
せっかく一緒に食べようと思っていたのに、勇人はなぜか不満そう。

「もしかして、好きじゃななかった?」

どちらかと言うとあっさりしたものが好きな勇人だから、鯛そうめんなんて嫌いだったかな?

「そうじゃなくて、何もしなくていいから休んでろって、言ったよな?」

ああ、そういうことか。
「うん、でももうすっかり元気だから」
「そうやって無理するから、倒れるんだろ」
「それは・・・」

実際倒れた私としては言い訳する余地もないけれど、勇人は少し過保護だと思う。

「油断してまた会社急倒れるようなことでもあったら、兄貴に首にされるぞ」
「だからそれは・・・」

結局勇人は私のことが心配なのではなくて、お兄さんの手前言っているだけなのかもしれない。
そう思うと少し寂しいな。
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