離婚前提から 始まる恋
ここは結婚に際して勇人が用意してくれたマンション。
元々三朝財閥が所有する物件らしく、そんな理由もあってここに決めたらしい。
都心にある高層マンションの中でも設備とセキュリティーにこだわった最高級物件で、値段は数億と言われるところ。
そこの最上階にある部屋は、眺めも最高な上に二人で住むには十分すぎる広さがあり、それぞれの寝室にはシャワールームもついている。

「はあー、気持ちいい」

明日の出勤を思えば早く眠りたいけれど、お風呂に入ることが習慣になっている私はお湯を貯めお気に入りの入浴剤を入れて湯船につかった。

「うぅーん」
グッと腕を伸ばして突き上げる。

やっと終わった。
選挙期間は二週間だったけれど、密度の濃い忙しい日々だった。
そもそも「近いうちに選挙になる」と聞いてから1年以上が経っている。
諸事情から選挙を待っていた私としても、長く感じる時間だったことに間違いない。

「やっと終わったのね・・・」
つい声に出てしまった。

クスン。
我慢できずに、涙が流れる。

これでやっと肩の荷が下りた気がするのに、心が晴れることはない。
その気持ちの理由がわかっていても、私にはどうすることもできない。

ったく、私は一体何がしたいんだろう。
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