離婚前提から 始まる恋
翌朝。
普段通勤するのと何ら変わらない様子で、勇人は十日間の香港出張に出ていった。

その日が土曜日でお休みだった私は溜まっていた洗濯物を片付けてから掃除機をかけ、買い物に出る準備を始めていた。

ピコン。
あれ、お母さんからのメッセージだ。

『今年のお盆だけど、できれば勇人さんと一緒に泊りがけで来れないかしら?お父さんが親せきや親しい方を集めて納涼祭りをするっていうのよ』

来月は8月で、お盆の時期。
昔から実家ではこの時期に親しい方々をお呼びして、納涼祭りと言う名のパーティーを行っていた。さすがにここ数年は感染症の影響で中止にしていたけれど、今年は復活させるつもりらしい。

『勇人さんをお披露目したいみたいだから、何とか都合がつかない?』

「えー」
スマホの画面を見ながら、つい声が出た。

お盆は会社も休みだから、勇人にも私にも休日はある。
私は数日間のまとまった休みが取れるけれど、勇人は取れても1日か2日。その貴重なお休みを実家のために使うのはかわいそう。

『私一人ではダメなの?』
いいわよと言ってもらうのを期待してメッセージを送ったのに、
『お父さんがどうしてもって言うのよ』

「そんなあ・・・」
こっちにだって都合はあるのに・・・

『悪いけれど、勇人さんに聞いてみてちょうだい』
お願いポーズのスタンプとともに送られてきたメッセージに、
『聞くだけ聞いてみます』
と返事を送った。
< 63 / 233 >

この作品をシェア

pagetop