離婚前提から 始まる恋
里佳子さんと勇人は大学時代からの付き合いで、気心も知れた仕事上のパートナー。
だからこそ、勇人がお酒に強いことも、二日酔いにならないことも知っている。
そのことに文句を言うつもりは無い。
今だって、私といる時間よりも、会社で里佳子さんと仕事をしている時間の方が長いのも承知している。
でもね、それは里佳子さんが勇人の秘書だからしかたがないと思っていた。
あくまで仕事上の関係で、最低限の礼節は守られるものと信じていた。
けれど、違ったらしい。

お酒に強く飲まれることなんてない勇人がホテルの部屋に里佳子さんを入れた時点で、それは了解の上の行動。
どんなに言い訳しても、秘書の仕事の範疇ではない。
それに電話を切る寸前、里佳子さんが『勇人』と呼んだのを私は聞き逃さなかった。
咄嗟の行動だろうけれど、だからこそ本性が出たのだと思う。
やはり二人の関係は続いていたんだ。

「フフフ、なんだかバカみたい」
誰もいない部屋で自虐的に笑いが込み上げた。

結局私は、2人に騙されていたんだわ。
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