離婚前提から 始まる恋
「おはよう」
「おはよう」

いつも通り7時に起きてきた勇人が、わざわざキッチンを通ってバスルームへ消えていく。

この家のインテリアはすべて勇人のチョイス。
ここを新居にと決めた時点で希望を聞かれたけれど、取り立ててこだわりのない私は勇人にお任せした。
おかげで、広いリビングはシックな色で統一されたイタリアブランドの家具が並び、大きくとられた開放部は全面ガラス張りで、東京の街並みが一望できる。
どこのインテリア雑誌を探してもここ以上にオシャレな家を見たことはないくらいだ。
ただ、キッチンだけは機能的なアイランド型のものをお願いした。
家全体がシックな色合いや照明で統一されているから合うのかなと不安だったけれど、キッチンは私が一番長くいる場所だからと無理を言って真っ白で明るい空間にしてもらった。
こんなオシャレなマンションだから、リビングからの夜景は宝石箱をひっくり返したように煌めいている。ただ、私は輝く夜景よりも、窓越しに見る朝焼けがお気に入り。
暗闇から徐々に色が加わりオレンジ色に変わって行く瞬間を見ると、それだけで一日のパワーをもらったような気持になれる。
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