とある会社の色んな恋



原田君を今まで、
そういう目で見たことはなかった。
7つ年下のかわいい弟って感じで、
かわいがっていたし。



でも、実際にデートしてみて、
本当の彼が見えた時、
もう弟のように思えなくなった。


「柿川さん、夜ご飯までまだ時間があるので、
本屋に寄ってもいいですか」
「うん、もちろん」

黒のちょっと高そうなコートに、
グレーのマフラー。
きれいに整えられた髪。

こういうのって
落ち着いた大人コーデというの?

私の原田君の私服のイメージは、
ダウンジャケットに派手なキャップをかぶって、
スニーカーにリュックという感じだったのに。

デートだって、
カラオケやボーリングに行くのかと思いきや、
美術館と本屋。


すごく…素敵。すごく…タイプ。



「本屋にはよく行くの?」
エスカレーターに乗りながら私がきいた。
「たまにですね。
本は好きなのでよく読むんですけど、
最近はネットで買うことが多くて」
「そうなんだ。
本より漫画を読んでそうなイメージだった。
ごめんなさい」
「あはは、大丈夫ですよ。
漫画も時々読みますから……」



その時、
下から私を見上げる原田君の表情が急に締まって、
ドキッとした。

いつも子犬みたいなかわいい表情なのに、
そんな大人っぽい顔するんだ…。

「……」
原田君の手が私の顔まで伸びてきた。
「……?」



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