とある会社の色んな恋


「あー、彼氏がいない私を憐れんで、
友達が誕生日にくれたんです~」
「推しはいるの?」

私たちは安い居酒屋の片隅で
ガバガバお酒を飲んだ。

お互いにお酒は強い方だけど、
テンションはどんどん上がって、
秋野さんが『職場用』から
『プライベート用』に
変わっていくのがよく見えた。

「いますよ~。
モニターの右上についてる彼。
優しくてちょっとミステリアス。
ヨシヒコって私は呼んでるんですけど」
「あはは!
何その名前のセンス!」


秋野さんってこんなに笑うんだ。
と思った。
そして、その笑顔を見ているだけで、
もう幸せすぎて
お腹もいっぱいになった。

「どしたの?」
「あ…いや…
秋野さんが笑ってくれて
すごく嬉しいです」
「俺、久しぶりに
こんな笑った!
だって、内海さん、
超おもしろいんだもん」


面白い…
そっか秋野さんにとって私は
『ただの面白い人』なんだ…
とがっかりしたら、
秋野さんが急に真面目な顔で
私を見つめてきた。




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