とある会社の色んな恋



お弁当を食べながら、ツイッターを巡回。
まずは推し声優と追いかけてる
アニメの公式アカウント、
その後、お気に入りの絵師やアーティスト。
それが終わるとブックカバーを付けた
BL漫画を読む。

私の席は後ろを誰も通らないから、
漫画の中身がバレることはない。
家ではアニメの見逃し配信を
見なきゃいけないから、
漫画を読む時間は昼休みくらいしかない。

オタクなのは職場では明かしてない。
だからいつも、細心の注意を払ってる。


今日もおいしかったな。
弁当のふたを閉じる。


大学卒業するまでは、
2次元の男だけで十分だった。

でも、社会人になって8か月。
私はアニメのキャラよりも、
話したこともない
弁当屋の彼に夢中になってる。


でも、案外あっさり、
話すことができてしまった。


それは冷たい雨が降る日。
「お電話有難うございます。
城野商事です。」
「お世話になっております!
にこにこ弁当の有瀬(ありせ)です!」
私は危うく受話器を
落としそうになった。

「え、あ、あ、あ、はい!
お、お世話になっております」
「大変申し訳ないのですが、
本日は配達が難しくて…」




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