とある会社の色んな恋

「次のだって」
「いや、私は──…」



ガタンゴトン…

駅も急行電車も、あんなに混んでいたのに、
次に来た普通電車は空いていた。

『この電車は終点、港しざき駅まで各駅に停車致します』

なんで宮森は私をこの電車に乗せたかったんだろう…
この調子じゃ、いつ家につくのやら。

「たまにはいーよな。鈍行」
「……」
「な?」

二人掛けシートの横に座っている宮森が、
足を組みかえて私の顔を覗き込んできた。

「うん…」


うん、じゃないよ。
ほんとは早く家に帰って泣きたい。

入社してからずっと好きだった清水さんに
彼女がいたなんて……

いや、それより…
人生で初めてバレンタインに本命チョコを
渡すという一大決心をしたのに、
その気持ちが無駄になったことが一番悲しい。

正直今は、誰とも話したくない。

「…腹へった。木下は?」
「うん…」

真っ暗でよく見えない窓の外に視線を向ける。
見えるのはガラスに映るブスな自分の顔。

はぁ……

「降りて何か食う?」

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