とある会社の色んな恋

「あの人は…おじさんだから…」

男性でも、優しそうなおじさんとは親しく話せる。
お父さんみたいなものだと思うから
緊張しないのかな。

「ふーン…」

まぁ、異性慣れしている
陽キャの宮森にはわからない感覚だろうけど。

『この電車は次の大宮駅で急行の通過待ちを致します』

社内アナウンスが流れ、
電車の速度がどんどん落ちていく。

「俺、大宮駅でトイレ行ってくるわ」
「え?発車までに間に合う?」
「大丈夫しょ」
「…」
「木下、俺の席、キープしとけよ」
「そんなのダメだって」
「他いっぱい空いてっからいーだろ」

電車が止まると彼はホームの階段をめがけて
駆けていった。


なんで一緒にいてくれるんだろう…

二人きりでいたことなんて、
今までなかったのに。


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