恋愛はもうしないと決めたのに、次期社長にアプローチされて困ってます!
メモ帳とボールペンを片手に五月は頭を下げる。総悟は目を細め、「そんなに固くならないで」と笑いながら言った。その笑顔を見ていると、多くの女性社員が彼を好きになるのも何となくわかる。

(この部署、綺麗な人が多いから、きっとこの中の誰かとお付き合いするのかな……。私には関係ない話だけど)

もう恋をしないと決めた自分には関係ない、傷痕のある場所に触れながら五月は心の中で思う。

総悟の教え方はとても丁寧で、わかりやすいものだった。前の会社でしたことのないことも、総悟の説明ならば一回で理解できてしまう。

「宇佐美さん、仕事覚えるの早いね」

「恋川さんの説明がとてもわかりやすいからですよ」

女性社員からの視線は相変わらず鋭いものだったが、そんなもの前の会社の時に比べればマシだ。悪口も嘘も何もない。

(すごく働きやすい会社だ……。やっぱり、転職してよかったな……)

五月はそう思いながら黙々と仕事を続けた。そして、気が付けば時計の針は十七時を指しており、時間が早く流れていることに五月は驚いてしまう。
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