命の玉
しばらく歩いた時だった。
背後から物音がした。こけしだ。幸い、すぐ近くに曲がり角がある。私は曲がり角まで全力で走った。これで大丈夫と安心して後ろを振り返った。ところが、こけしは曲がり角を曲がってこっちへ来る。ううん、こけしじゃない。あれはあのこけしと同じくらいの大きさの日本人形だ。気を抜くんじゃなかった。もう逃げられない。私はあきらめてその場にうずくまった。ずると日本人形は私を通り過ぎて向こうへ行った。私は立ち上がって歩き始めた。床がきしんで気味の悪い音が鳴った。すると、通り過ぎて行ったはずの日本人形がこっちに来た。もしかしたら日本人形は目が見えないのかも。なら、であったら音を立てなければいいんだ。でももう音を立ててしまった。私はとっさに近くに落ちていた小さなこけしを遠くに投げた。すると日本人形はこけしを投げたほうに行った。
よかった。安心したらまた力が抜けてその場に座り込んでしまった。これからはもっと気を引き締めていかないと。私は立ち上がって足をぽんぽんと叩き、立ち上がった。
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