プラトニック ラブ

冴木に頭が上がらない理由



でも、俺は彼女に頭を上げることが出来ない。





マネージャーという職業は、現場への送迎だけじゃない。

パソコンでの事務作業
スケジュール管理
メディア関係者への出演交渉や挨拶回り
宣伝活動
担当芸能人の身の回りの世話など。

それに加え、今回は留学の手続きや準備等も同時進行だった。



しかし、彼女の場合は通常任務だけではなく。



38度の高熱でフラフラなクセに、『何ともないよ』なんて気丈に振る舞い、デビュー1年目のファーストライブに応援に来てくれたり。


台風で交通機関が乱れて足止めされてしまった時、次の仕事に遅れぬようにと10件以上のタクシー会社に連絡して、タクシーを用意してくれたり。


風邪を引いた日には、1日でも早く良くなるようにと、自家製の生姜湯を持ってきてくれたり。


いつもぎゅうぎゅう詰めの鞄には何が入ってるのかと思ってジュンと2人で鞄を開けてみたら、夏は俺達の身体がバテないように保冷剤とミニ扇風機と麦茶。
冬には俺達が身体を冷やさないようにと、貼るカイロを10個以上に膝掛けと箱入りマスクが入っていたり。


俺達よりも帰宅が遅くて疲れているくせに、2人の誕生日には必ずと言っていいほど、手作りのクッキーを作ってお祝いしてくれたり。


用意してくれているペットボトルのお茶には、いつもマジックでひと言応援メッセージを書いてくれたり。


収録現場の出口でドッと押し寄せて来たファンから身を守ってくれた際、転んでスーツのスカートが破けてしまっていたのに、俺達に向かって『大丈夫?怪我してない?』なんて、自分の身よりも俺達の身を案じていたり。



大きな事から小さな事まで、常に俺達に気を配っていてくれた。



一見、鉄仮面のようでクールに見えても。

本当は人一倍愛情深くて、
自分の事なんていつも後回しで、
常に俺達の事ばかりを気にしている最大級の仕事バカだ。




デビュー前から、辛い時も苦しい時も、一緒に悔し涙を流しながら、苦労を重ねて支え続けてきてくれていた大事な仲間。




だから、俺ら2人は完璧だけど人一倍不器用な冴木さんが好きなんだと思う。

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