プラトニック ラブ
黄色い声援
ビルの裏口で待つファンから少し距離を置いたガードレール側で暫く待っていると、サブマネージャーの伊藤がKGKの2人を連れてビルの出入り口から出現し、車道に待機しているタクシーへと向かった。
すると、女子達はKGKのオーラにすぐさま反応し、まるで狩りをする時のような鋭い目つきになる。
「ジュンーっ!」
「セイーーっ!」
「キャーーッ、こっち見たぁ」
「カッコイイーー!!」
甲高い声を出してKGKの傍に押し寄せて行く。
今にも声が枯れそうなほどの熱狂っぷりに、紗南はただただ言葉を失う。
彼女達はきっと、隣に何歳くらいの女性がいるのか、何色の服を着ているのか、KGKのどちらを応援してるかさえ知らないだろう。
そして、街の騒音すら耳に入れないほど最高潮な興奮を見せ、タクシーの扉が閉まる寸前まで彼らの方へ身を押し寄せる。
人集りでもみくちゃになりながらも、人と人の隙間から手を伸ばして直接彼らに触れようとしたり、持参したプレゼントを渡していた。
一方のKGKは、車が発車する瞬間までファンサービスを忘れずに笑顔で愛想良く手を振り続けた。
タクシーが発車すると、彼女達は名残り惜しむかのように後を走って追いかけた。
別のタクシーを呼び止めてKGKが乗る前のタクシーの後を追う者もいるが、多くの女性は道路に見送りに出て道を塞ぎ、後方から走行してきた車から、注意を促すクラクションが鳴らされている。
そこで女性達は祭りを終えた後のように一気に現実へと引き戻され、渋々と歩道の方へと身を寄せた。