プラトニック ラブ
芸能人の彼と、一般人の私
私ったら⋯⋯⋯、最低。
自分の気持ちばかり優先していて、セイくんの日常生活を知ろうともしなかった。
家で寛いでいる時や仕事の合間など、少しでも手が空いた時にメッセージの返信をしてくれればいいのになって、利己的に考えてた。
でも、ギッシリと書き詰められていた仕事のスケジュール帳を見たら、こまめな返信なんて無理だとわかった。
返信する暇があるのなら、少しでも身体を休ませた方がいい。
間近で彼の仕事ぶりを見たり、熱狂的にタクシーの後を追うファン達を見ていたら、芸能界で活躍している彼と、ごくごく一般人の私との間には、大きな壁が1枚挟まれている事に気付かされた。
冴木は紗南にセイの現状を知ってもらう為に、サブマネージャーの伊藤と一時的に任務を交代していた。
次の仕事先でバトンタッチした後は、再びマネージャー業に戻る。
紗南に伝えたい事は全て伝えたが、最終的な回答が受け取れず、消化しきれない気持ちが残る。
だから、次のステップに向けてセイが楽屋にいない隙を狙いジュンの元へ足を運んだ。
「ねぇ、ジュン。大事な話があるんだけど」
冴木はジュンの隣の椅子に座る。
「……え、俺?何っスか?」
音楽バラエティの台本を握っているジュンは、キョトンとした目を向ける。
「協力して欲しい事があるの。これはセイの為でもあり、貴方の為でもあるんだけどね」
冴木は話を誰にも聞かれないように、ジュンにそっと耳打ちをした。