プラトニック ラブ
彼の言葉を信じて⋯
ーー同日の夜23時過ぎ。
紗南は自宅のベッドに座り、セイが家にいると思われる時間帯を狙ってスマホに電話をかけた。
彼が電話を取らない前提でも、電話をかけようと思った理由は2つ。
1週間ほど会えていないから無性に声が聞きたかった事と、留学の日程が前倒しになった件をやはり本人の口から聞きたかったから。
昼間、芸能人として仕事に打ち込んでいる姿を間近で見せてもらったり、ギッシリと書き詰められていたスケジュールを見せてもらったり、熱狂的に追いかけるファンの後ろ姿を見せてもらった。
自分が留学への足かせになってる事や、彼が忙しくて連絡出来なかったり、なかなか会えない事は充分に理解したけど。
そこに、彼の想いは1つも挟まっていない。
『俺には紗南が一番だよ』
先日、保健室のカーテン越しに気持ちを語ってくれたあの時の言葉が全てだと思いたい。
冷静に考えてみたら、自分達の恋愛は自分達だけのもの。
人から言われて気持ちを揺るがせるのはやっぱり間違ってる。
だから、見たり聞いたりした事は1度置いといて、余計な事は考えずに彼の言葉だけを信じようと思った。