プラトニック ラブ
最後のプレゼント
幼少時代からの夢を叶えて、歌手として活躍しているセイくん。
小学生の頃は、声楽教室の入ってるビルの非常階段で1人歌の練習をしていた。
誰にも負けたくなくて。
今より少しでも上手になりたくて。
いつも楽譜とにらめっこをしながら発声練習を重ねていた。
彼は努力が才能へと結びついて、普段から先生に褒められていたけど、自分が納得しないと再び歌の練習に戻る。
自分にはとても厳しい人。
負けず嫌いなところがとてもカッコ良くて、ずっと私の憧れの人だった。
でも、そんな彼の運命を握っているのは、何の取り柄もない自分。
戦える武器が1つもないクセに、独占欲ばかりが横行している。
自分は彼の為に何をしてあげられるのだろう⋯と考えたら、殆ど答えが見つからなかった。
将来という重石がのしかかると、先程から長く連なっている涙が止まらなくなった。
そして、ポケットの中の【勇気の飴】は手から離れて再びポケットの中で眠りについた。
紗南は口を閉ざして意気消沈していると、冴木は肩にかけていた鞄を開いてガサゴソ手で探って何かを取り出した。
「ようやく賢明な判断が出来そうね。……じゃあ、これは私から貴方への最後のプレゼントよ」
そう言って、手中の四つ折りのメモを手渡し、短い髪を揺らせながら保健室の中へと入って行った。
一方、廊下に取り残された紗南は、冴木から受け取ったメモを丁寧に開く。
すると…。
精神的に追い込まれている最中、更に追い討ちをかけるような衝撃的な内容を目にした途端。
紗南はメモを開いてる手をガタガタと大きく震わせた。