プラトニック ラブ

寂しそうな瞳



しかし、冴木は息つく間もなく背後からやって来た警備員2人の手によって身を確保されてしまった。



「君、今すぐにここから出なさい」

「嫌です。大事な人と大切な話があるんです」


「君の意見など聞いていない。さぁ、私達と一緒に来るんだ」



警備員に両脇を支えられると、強引に教室の外へと引きずり出された。
まるで逃走劇の犯人のような扱いに⋯。


芸能科の生徒達は、見知らぬ女子生徒の騒動を一部始終見届けると、隣の人と顔を見合わせてヒソヒソ話を始めた。







およそ1ヶ月ぶりの彼。
より多くの視線が集まっていた中で、目線はしっかりと結びついていた。


確実に視界に捉えていたはずなのに⋯⋯。


私を守る為に警備員との間に割って入ったり、争いを辞めるように説得したり、何か言葉を発する事もなく…。


ただただ、寂しそうな瞳で静かに私を見つめていた。




「やめて、離して!」

「お騒がせしました。失礼致します」



警備員は軽く頭を下げた後、冴木の両腕を持ち上げて引きずるように階段の方へと消えて行った。

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