プラトニック ラブ
超人気歌手の彼
私、 福嶋 紗南は超人気歌手『KGK』のメンバー セイくんと、およそ2週間前から極秘交際を始めたばかり。
人が羨むほどの彼氏をゲットして、同校の保健室にて密会を続けている。
彼の本名は、皆川 一星。
ちなみにニックネームのセイは、本名の一星から一文字を使ったとか。
見た目は茶髪で流行りのマッシュスタイル。
クリッとした二重の左目の下の涙袋には泣きぼくろが2つ。
身長は180センチ近くのスリム体型。
セクシーな歌声はストレートに心臓を撃ち抜くほど印象的だ。
彼は、私が小学1年生の時から通っていた声楽教室の仲間であり幼馴染でもあった。
私は小学5年生の冬に家庭の事情で先に声楽教室を辞めた。
彼はその後も教室に通い続けて、長年抱いていた夢を叶えて歌手として成功を収めていた。
お互いの連絡が途絶えて空白だった約6年間。
名残惜しさのあまり歌から離れる事は出来ずに口ずさむ程度に歌っていたけど、医師を目指して勉強に没頭してきたせいか、ここ数年は芸能関係にはすっかり疎くなっていた。
だから彼が歌手デビューしていた事を知らなかった。
しかし、テレビから繰り返し曲が流れていたり、街中でポスターを目にした事もあって何となく存在を知っていた。
ーーでも、つい数ヶ月前。
高校の保健室のベッドで横になっていた時にカーテン越しに話しかけていた顔も名前も知らない人が、幼馴染で片想いの相手だった皆川くんだったなんて思いもしなかった。
6年という目覚ましい成長期を乗り越えてきたから、声変わり後の声を聞いただけじゃ分からなかった。
KGKのポスターを街見た時は何となく皆川くんに似てるなぁ〜と思う程度。
声変わりをしていたし、2センチしか変わらなかった身長もグッと差が開いて大きくなっていて顔つきもだいぶ大人びていた。
しかも、セイくんの口から私が昔から会いたがっていた幼馴染に『もう会えたよ』と言って、自分が皆川くん本人だとカミングアウトした時は正直ビックリした。
私が歌を辞める事になった小学5年生の声楽教室の最終日、別れの言葉を伝えると彼は瞳を潤ませながら再会の約束を口にした。