プラトニック ラブ
エスマーク
画面右上には午前11時頃と白文字で表示。
いま流れている映像なライブではなく、1時間半近く前のビデオ映像だった。
彼はもう空港から離れて別の場所に移動している可能性がある。
今は一体何処へ……。
紗南の意識は完全に画面越しのセイへ。
インタビューは終盤に差し掛かると、動く歩道で移動中のセイの後ろ姿はテレビ画面の右側へと流れて行った⋯。
⋯⋯と、その時。
セイは急にカメラに振り返って目線を合わせたと同時に、まるで紗南がテレビを観ている事を知っているかのように、2年ぶりに指先を象りエスマークを見せた。
ーーそれは。
ほんの1秒にも満たないほどの短いショットだった。
当人のセイは、2年日本に1人で待たせた紗南に向けて特別なメッセージを送ったつもりだった。
紗南は2年ぶりのエスマークを見た瞬間、固い殻を身にまとい続けていた気持ちに追い風が吹いた。
トクン…
恋が順調だったあの時と同じく、胸の鼓動が高鳴る。
私………。
行かなきゃ。
セイくんが日本に戻って来たから、今から会いに行かなきゃ。